2024/10/29 16:45
毎月思いますが、あっという間です。
もう10月も終わり、まもなく11月。今年はあと65日だそうです。
夏真っ盛りの8月、私はサラリーマンから珈琲屋へと転身しました。
厳密に言えばお店自体は6月末からスタートしていたのですが、私の仕事の兼ね合いもあり、平日は信頼できる友人らにお店を任せ、土日だけお店に立つという生活をしていました。
お店をオープンするにあたって、何より大切にしたいのは、自分自身がワクワクするお店を作るということ。自分がワクワクしていれば、きっと何事もうまくいくという、安直で子供な考えです。ただ、これが意外とうまくいき始めている気がしています。
オープンから丸4ヶ月。私が本格的に動き始めてからは、丸3ヶ月です。まだまだこれからなのは言うまでもありませんが、徐々にお客様も増え、認知度も上がってきたような感覚があります。オープン当初はお客様のほとんどが知り合い(もしくは知り合いの知り合い)にとどまっていたのですが、ここ1ヶ月くらいは新規のお客様が増え、徐々に次のステップへと進んでいる実感もあります。楽しんでお店を運営する、自分自身がワクワクするコーヒーをお出しする、簡単なようで難しいこの課題をクリアするのに、ブレンドは大いに貢献してくれています。
ブレンド。
私のお店では、毎月異なるブレンドをお出ししています。9月は長月ブレンド、10月は神無月ブレンドのように、それぞれの月の名前をブレンドとし、店頭とオンラインの両方で取り扱ってきました。毎月このブレンドを考えるのがとにかく楽しくて、毎月完成したブレンドについては、少しずつではあれどブログを書いてきました。
そんなブレンドを考える上で重要視しているのは、季節感。特にイベントがある月は、イベントに絡めた内容を心がけています。
例えば10月。今月のブレンドである神無月ブレンドは、ハロウィンをモチーフにしています。パンプキンケーキと一緒にペアリングして欲しいとか、ぐっと寒くなったハロウィンの夜にホットで楽しんで欲しいとか、そういう感じです。店頭で直接お話しできるお客様には、パンプキンケーキと神無月ブレンドを一緒にお出しすることがかなり多くあり、その度に内心ワクワクしながらドリップしてきました。神無月ブレンドの説明文にもパンプキンという言葉を使用し、とにかくハロウィンを全面に出したブレンドと言えるでしょう。
さて問題は来月です。
11月。
いやこれ、とっても困りました。これまであまり深く考えてこなかったのですが、11月ってすごく地味なんです。10月はハロウィンがあります。12月はクリスマスがあります。11月は、、、。クリスマスの前の月でしかないです。季節的にもあいまいで、11月は多分秋だけれど、冬ほど寒くはない。12月から冬、みたいな印象が強すぎるせいで、11月は季節の変わり目としての役割も与えられていない。こんな月、他にはないと思うんです。お正月、バレンタイン、ホワイトデー、新生活、ゴールデンウィーク、梅雨、初夏、真夏、秋の訪れ、ハロウィン、11月、クリスマス。ブレンドを考えるにも、要素が無さすぎる。
ということで、11月は自分が飲みたいブレンドを作ることにしました。心機一転。
先月、先々月のブレンドを思い返し、そして来る12月のブレンドのことも頭に入れ、自分が11月の間飲みたいと思うブレンドを作る。そうなると意外にも話はスムーズでした。
肌寒くなってきたこともあり、ここ最近のブレンドは深煎りが多かったんです。ホットで、濃厚なケーキと一緒に楽しめる、的な雰囲気で。季節感はあるのですが、そうは言っても毎月似たようなブレンドだと流石に飽きてくる。お店でブレンドをお出しするにも、毎回テイスティングするのに胃もたれしてしまいます。よし、11月は軽めのブレンドにしよう。
浅煎りとまではいかないのですが、かなり軽めの焙煎をしている、今回の霜月ブレンド。コロンビアのブルボンと、ニカラグアのマラカトゥーラを半々で入れています。自分が好きな味を作れば良いので、これまでより簡単にできるかと思っていたのですが、そう簡単ではありませんでした。
浅煎りで焙煎しようと思ってお豆を焙煎機へ投入。いつも通りの焙煎で、浅煎りを作ってみました。が、思ったような仕上がりにならない。どうも火の入り方が微妙なんです。生焼けとも違う、焦げているとも違う、なんとなく嫌な感じがする、という印象です。原因は、お豆のサイズにありました。
マラカトゥーラ。実際に見てみるとわかるのですが、めちゃめちゃ大きいんです。今回使用しているコロンビアも割に大きな部類ですが、それでもマラカトゥーラはコロンビアの2倍くらいあります。ちょっと考えればわかることですが、慣れとは怖いもので、大きさのかなり違うお豆を、一緒に焙煎してしまったんです。当然火の入り方も異なりますし、引き出される味も全然違う。これでは美味しくなるはずがありません。
ニカラグアとコロンビアを別々に焙煎機へ投入。浅煎りではあるけれど、それぞれの理想的なタイミングで焙煎をストップする。これで美味しくなるはずだったのですが、これがあと1歩(いえ、実際の感覚的にはあと2歩くらい)足りませんでした。
以前までの嫌な感じは無くなったのですが、今度は特徴が出ない。言葉を選ばずに言えば、薄い感じです。ただ、温度帯によっては美味しいタイミングがあります。焙煎で問題があるのかとも思いましたが、ドリップの仕方を変更することにしました。
10月までのブレンドが中深煎りでドリップしやすかったこともあり、浅煎りのドリップ方法を模索するところからスタートです。厳密に言えば、お店でエチオピアのお豆を取り扱っていたので、全くのゼロからというわけではないのですが、今回のブレンドはちょっと曲者だったので、ほとんどゼロからのようなものです。
注ぎ方を変えたり、時間を調整したり、何度もドリップしなおしていたとき、突然嫌な酸が消え、良質なブレンドが出来上がりました。ドリップの仕方を文章で説明するのはかなり難しいので割愛しますが、お店にお越しいただければある程度はお伝えできるかと思います。
なんやかんやありまして、自分で納得のいくブレンドができました。自分好みの、柔らかなブレンドです。
霜月ブレンドは、繊細で上品。そして、控えめな華やかさが特長です。
秋の終わり、肌寒い夜に短く深呼吸をするようなイメージ。爆発的な個性やフルーティーさは抑え、控えめでありながら少しだけ口角が上がってしまう、そんな仕上がりです。少し物足りなさを感じつつも、飲み終わるのが名残惜しい。
地味で控えめ。奇しくも、11月らしさ満点です。
霜月。