2024/12/31 22:46
ちょっと捻った、年末らしいテーマを半日くらい考えていたのですが、面白いほど何も浮かばなかったので、普通に振り返りをしてみようと思います。
今年に入ってすぐの頃。私はまだサラリーマンをしていました。
だんだんと社内での役割も明確になり、私は営業担当的な立ち位置で、日々仕事に打ち込んでいました。毎日4~6件程度のzoom会議をし、1か月のうち1週間くらいは全国各地へ出張。移動時間に連絡を返し、打ち合わせで発生した大量の仕事を、社内のメンバーと分担して遂行する。絵に描いたような営業担当、絵に描いたようなサラリーマンです。特に私の仕事は決まった商材を売るタイプの仕事ではなく、お客様の要望によってかなり流動的な提案をするタイプの仕事だったので、やりがいもワクワク感もありました。神経をすり減らしながらシビアな話をする、人によっては苦手意識を持つ方もいらっしゃるかもしれませんが、私は割と好きな仕事で、日々何かを追い、何かに追われながら生活していました。
昨年の今頃は、一人暮らしもしていました。職場から自転車で10分ちょっとくらいの距離に、1Kのありきたりな(しかしかなり綺麗な)部屋に住んでいました。人生初の一人暮らし。部屋にはコーヒーの器具が規則正しく並べられ、反対側の壁には一面の本。好きなものに囲まれ、我ながら私らしい部屋でした。
コーヒーを飲みながら本を読み、プロジェクターを使って大画面で海外サッカーを観戦。仕事はハードでしたが、その分プライベートも充実させることができていました。日々懸命に働き、時に贅沢として趣味にお金を使う。今のお店に置いてあるMarshallのスピーカーや、クロード・モネの複製画などは、一人暮らしの部屋を充実させるために購入した品々でした。とんでもない贅沢な暮らしはできないけれど、お金で苦労することはほとんどなく、私の趣味は大体において安上がりなものばかりでしたので、不自由を経験することは滅多にありませんでした。
公私共に満足していたと言って良いでしょう。仕事にも恵まれ、私生活も充実。それでもやはり夢だった珈琲屋を実現するべく、動き始めました。
コーヒーの本格的な勉強を始め、物件探しをしました。驚かれることも多いのですが、物件探しを始めたのは今年のGW。その月の月末にはプレオープン。とんとん拍子でしたが、これも縁だと思い、思い切ってスタートすることにしました。仕事は大好きでしたし、新卒で拾ってくれたという感謝も、成長の機会をこれでもかというほど与えてくれたという感謝も大いにありましたが、思い切って仕事を辞め、安定した生活を捨てることにしました。もちろん怖かったのですが、それ以上に好奇心が勝ってしまいました。
準備期間はほとんどありませんでした。
私が意思決定したのは5月の中旬、プレオープンは5月末。実に2週間の間で、全てをやり切らなければなりません。
コーヒーをドリップする台も、使用するお豆も、器具も、メニューも、什器も、何から何まで決め、そして月末には全て揃えなければなりません。サラリーマンと珈琲屋の両立が始まります。
もちろんワクワク度合いで言えば、珈琲屋の方が圧倒的に大きく、サラリーマンとしての仕事中も、これから開く珈琲屋のことで頭はいっぱいでした。それでも仕事は絶対にやり切ると決めていたので、日中は仕事に打ち込み、昼休みは珈琲屋の準備、仕事は定時までに終わるように段取りし、帰宅後はすぐ珈琲屋の準備。当時一人暮らし中だったのですが、お店に行く必要がある場合は、片道1時間以上かけて原付でお店へ向かい、やることをやってから、再度原付で帰りました。とにかく時間があれば、片っ端から準備を進めてきました。
あれがない、これがないは当たり前。あれも買わなきゃ、これも買わなきゃ。これが欲しいけど、もう間に合わない。全部がうまくいくわけではありませんが、嘆いている暇はないので、できることからやることにしました。
結果としてプレオープンは無事終えられたわけですが、これには多くの協力がありました。メニューの開発をするために、丸一日カフェを回ったりしたこともありましたし、私が季節物のフルーツ系ビバレッジも欲しい、と言えば、数日後にはいくつもフルーツベースを作ってきてくれる友人もいました。プレオープンの前日にならないとできない仕込みの仕事は、夜中までかけて手伝ってくれる友人がいました。ドリップの器具が必要だと言えば、あっという間に手配してくれた、私の恩師がいました。とにかく、一人ではなく数多くの仲間に助けられました。
プレオープンからオープンまでの期間でさらに味を調整し、いざ、オープン。6月30日のことです。
とはいえオープンしてからの1ヶ月間、私はサラリーマンです(仕事の兼ね合いがあり、すぐ辞めるなんてわけにはいかず、私もそれは承知の上であり、前職への感謝も込めて働き続けました)。平日の間は友人らが入れ替わり立ち替わりでお店を守ってくれました。先輩後輩関係なく協力してくれ、なんと全日のシフトが瞬く間に埋まりました。土日は私がお店に立つ予定だったのですが、体調を崩してしまうことがありました。急遽土日休みの友人に連絡をし、シフトに入ってくれることになりました。ありがとう。貴重な土日休みを、お店に費やしてくれました。毎日誰かに助けられ、感謝と申し訳なさで胸がいっぱいになりました。
そして8月。ようやく私は、本格的に珈琲屋となりました。
そこからの5ヶ月間は、正直ほとんど何も覚えていません。生活が苦しくなりました。汗だくになりながら、やったこともないポスティングをしました。コーヒーを飲み過ぎて、味がわからなくなりました。不安で眠れなくなることがありました(カフェインの摂りすぎなだけでしょうか)。少しずつお客様がついてきましたが、去っていくお客様も出てくるようになりました。とにかく不安定ですが、これ以上ない刺激の中毎日生活できるようになりました。心が、豊かになりました。
2024年。
私の人生を振り返ってみても、これまでで一番劇的な年でした。
今こうして(とりあえずは)生きていられるのは、いつもお店に来てくれるお客様や、オンラインで応援してくれるお客様のおかげです。ありがとうございます。感謝の念は、書けば書くほど陳腐になるので、これ以上書くのはやめておきます。
2025年。
さらなる飛躍の年にしますので、応援のほど、よろしくお願いいたします。