2025/01/28 12:49
酸っぱいコーヒーが苦手なんです。
お客様にコーヒーのお好みを伺うと、実に半数以上の方がそう答えられます。
或いは、酸味のあるコーヒーが苦手なんです、とも。
分かります。酸っぱいコーヒーって、私個人としてもあまり好きではないです。口に残る感じがするし、冷めれば冷めるほど、どんどん嫌な感じが強くなってくる。水で流してもなんとなくイガイガした味わいが残っているし、カラメルともポップコーンともつかない微妙な香りがどうにも受け付けられません。分かります。
また、酸っぱいコーヒーが苦手、という話に紐づいてくるのが、だから浅煎りは嫌なんです、という話です。
確かに酸っぱいコーヒーはほぼ100%が浅煎りのコーヒーですし、浅煎りに抵抗を覚えるのも分かります。ただ一方で、酸っぱくない浅煎りが存在することもまた事実です。浅煎りだけど酸っぱくなくて、爽やかで飲みやすい、そんなコーヒーが世の中にはちゃんと存在します。フルーティーで、柑橘っぽさやベリーっぽさが感じられて、爽やかでスッキリ。こういうコーヒーは、ちゃんと存在するんです。しかしこれを口頭だけで説明するのは非常に難しく、初めてお会いしたお客様に対して、うちの浅煎りはとってもフルーティーで、、、なんて話をしてしまうと、大抵断られます。きっと過去にあまり美味しくない浅煎りを飲んだ際も同様に、うちの浅煎りはとってもフルーティーなコーヒーです! と説明をされていたのでしょう。お客様の中にはごく少数ですがはっきりと、フルーティーとかフローラルとかそういうコーヒーは避けるようにしてるんです、と話される方もいらっしゃいます。確かに私自身も同じ経験をしたことがあるので、気持ちは痛いほど分かります。フルーティーなコーヒーという言葉に魅力を感じ、結果的に酸っぱいコーヒーを飲むことになり、かなり残念な気持ちになったことは数えきれないほどありますし、その全てが浅煎りのコーヒーでした。
ただ前述の通り、美味しい浅煎りも存在します。
これはもう説明なんてできないので、お店に来て飲んでみてくださいとしか言いようがないのですが、きちんと火が通っていて上手に抽出された浅煎りのコーヒーは、本当にフルーツのような明るい印象を持っていますし、物によってはベリーのような甘味を感じることもあります。
浅煎りのコーヒーは抽出が難しく、さらに焙煎も難しい。どちらも上手にできていないと、美味しい浅煎りは完成しません。故に、美味しい浅煎りを出すお店が少なかったり、浅煎りのお豆を買ってきても美味しくなかったりするわけです。美味しくない浅煎りしか飲んだことのない人に、浅煎りの魅力を言葉だけで伝えるのは、非常に難しいです。
ここからはちょっと細かい話を。
酸味と酸は違うという表現を、私はよく使います。
酸味は、おそらく多くの方が想像する、口の両端がキュッと縮こまるような、いわゆる酸っぱさのようなもの。
一方で酸は、さくらんぼや苺の甘さの裏側に存在する、優しくも爽やかで、上品な味わいのことです。
酸味のあるコーヒーは私個人としてあまり好きではありませんが、酸のないコーヒーは、どことなく締まりがなく、ぼやけた印象になってしまいます。甘さを引き立たせる酸は、あって然るべきです。
なかなか伝えるのは難しいですね。文章だと、なおさら。
焙煎の難度も去ることながら、ドリップの難度も非常に高いので、庭珈琲では、浅煎りのお豆の販売等を極力控えるようにしています。お店で私のドリップしたコーヒーをご注文いただく場合にも、できるだけお客様のご要望を伺い、浅煎り以外を提供するようにしています。もちろんお店で出している浅煎りは美味しいのですが、良質な酸であっても、苦手意識を持たれる方は一定数いらっしゃるので、酸味が嫌いだとおっしゃるお客様には、テイスティング用の小さなグラスで、後からちょっとだけお渡ししています。これで浅煎りの魅力に気づいてくれたら嬉しいな、なんて気持ちで。
今現在、お店で扱っている浅煎りは、エチオピアのイルガチェフと、パプアニューギニアのゲイシャのみです。ただ、先日伺ったコーヒー屋さんで頂いたコロンビアの浅煎りが衝撃的に美味しかったので、うちでも扱ってみようと思います。
メニューに載せることはしませんが、ご注文画面で、浅煎りでよろしく、みたいな一言を添えてくださった方には、浅煎りで焙煎し、発送させていただこうかと。クランベリーやストロベリーのようなフルーティーさが特長で、兎にも角にも美味しいです。
庭珈琲としてはちょっと珍しい浅煎り。ぜひ。