2024/08/23 12:00

 以前、こんな相談を頂きました。

 「買ってきたコーヒー豆が膨らまなくなっちゃったんだけど、もう賞味期限切れかな」

 おそらく多くの方が直面したことのある課題であり、膨らむ=新鮮、という一つの指標がある以上、仕方のない解釈だと思います。現に、私自身も豆が新鮮かどうかを判断するのに、膨らみを参考にすることがあります。今日はそんな、「膨らみ」に関することをつらつらと書き綴ってみようと思います。
 結論から言えば、膨らまないお豆は別に悪者ではありません。ただ、焙煎日から少し時間が経っているのは間違いないので、新鮮ではないというだけです。ちょっと噛み砕いて説明しましょう。
 コーヒー豆において、新鮮度とは別に、飲み頃という考え方があります。スーパーで買ってきたバナナも新鮮度を見た目で判断できますよね。薄緑色から黄色に変わり、黒い斑点が出始め、そして真っ黒になっていきます。しかし一方で、食べ頃という観点で考えれば、人それぞれ、ということになります(私は黒い斑点が少しで始めたくらいが好きです)。何が言いたいかって、要は好みだよってことです。
 焙煎直後の味が好きな人もいれば、焙煎してから少しおいたほうが好きな人もいて、一般的には、少しおいたほうが美味しいと言われている、というだけの話です。一般的には。なぜ少しおいたほうが良いのかという話も必要そうですね。少しおくのは、炭酸ガスによる影響です。焙煎の過程で化学反応が起こり、コーヒー豆の内部から炭酸ガスが放出されます。これは焙煎直後から時間が経つにつれ徐々に放出量が減少し、いずれほとんど放出されなくなっていきます。この炭酸ガスが抽出を邪魔し、味に影響を及ぼすんです。詳しくは「蒸らしの時間って」をご覧ください。ざっくりいうと、ガスが大量に出ている間は、コーヒー豆から味を取り出しにくいから、ちょっと待ってる、といった感じです。
 この炭酸ガスが膨らみに直結していて、新鮮であればあるほど炭酸ガスが多く放出されるということは、裏を返せば、新鮮度が下がると膨らまなくはなるけど、味は取り出しやすくなる、ということです。じゃあ時間をおけばおいた分だけいいのか、というとそうでもなく、これまた別の話が絡んでくるわけです。炭酸ガス以外の話とは、酸素です。世の中の大抵のものが酸素に影響を受けますが、コーヒー豆も当然酸化していくわけで、これまた時間の経過とともにどんどん酸化していってしまうんです(当然と言えば当然ですね)。炭酸ガスは少ないほうが味を取り出しやすい、時間が経てば炭酸ガスは出にくくなるので味は取り出しやすい、でも時間とともにどんどんコーヒー豆は酸化していく、、、。ジレンマのようですが、つまりはそういうことです。なんとなくふわっとした回答になってしまうのですが、膨らまなくても、まだまだ酸化していない状態であれば、美味しいということです。
 さて元の話に戻ってみると、膨らまない豆は悪者なのか?ということですが、膨らまないから悪者ということはありません(改めて)。ただ、経験則上ではありますが、完全に膨らまなくなってしまったお豆は、酸化が味に影響を出し始めてしまっていることもあるので、ドリップの仕方は慎重にならないといけないです。温度管理や抽出の仕方、レシピの変更、、、。やらなければならないことはたくさんありますが、この辺はハンドドリップ講座なんかでお伝えしようかと思います(どうしても文章で伝えるのは難しいんです)。

 まあ、早めに飲みきっちゃえばなんの問題もなしってことですね。