2024/09/20 16:16
昨今人気の出ている浅煎りコーヒー。巷ではサードウェーブコーヒーなんて呼び方もされていて、今注目の!コーヒーといった感じです。
コーヒーが苦手な方でも紅茶感覚で楽しめることから、(これは私の主観もありですが)主に女性人気を獲得しているように思えます。
今日はそんな、浅煎りコーヒーのお話です。
浅煎りコーヒー。好き嫌いがはっきり分かれ、好きな人はとことん好き、嫌いな人はとことん嫌い、といった印象です。たしかに言わんとしていることは理解できます。浅煎りのコーヒーって華やかで明るいものなので、ガツンとした深煎りのコーヒーがお好きな方からすれば好みとは対照的なものです。深煎りが苦手で、コーヒーとは苦いものである、という認識を持たれている方からすれば、浅煎りのコーヒーは革命的なものであり、これなら飲める!という感想を抱くことが多いのでしょう。紅茶みたいで、苦くない。ただ一方で深煎り好きで、昔ながらの喫茶店のようなコーヒーを求める方からすれば、浅煎りコーヒーはなんとなく物足りない。
どちらもよし、ですね。一長一短。表裏一体。結局は好みです。
私自身もコーヒーの好みというものはありますが、好みとは至極漠然としたもので、私の好みをどうにかして最大限言語化しても、トゲのない味わいのもの、という抽象的な言葉でしか表現のしようがないんです。浅煎りも深煎りも(もちろん中煎りも)どれも好きだし、裏を返せば、好みではない、もっと言えば嫌いな浅煎りも深煎りも存在するわけです。ややこしいですが、なんとか噛み砕いて説明しようと思います。
今回のテーマは浅煎りなので、深煎りについてはまた別の機会で。
浅煎りのコーヒーが(私の主観において)美味しくない場合は、大きく分けると2パターン存在します。
1つは抽出がうまくいっていないパターン、もう1つは焙煎がうまくいっていないパターンです。
抽出がうまくいっていないというのはどういう状況か。ズバリ、過抽出です。お湯とお豆が必要以上に長い時間触れ合ってしまい、お豆が持つ嫌な部分まで抽出されてしまう。そうするとお豆が持つ嫌な部分まで出てしまうんです。うまく例えにくいのですが、鰹出汁とかもそうじゃない?って話をよくします。独特のえぐみというか、渋みというか、長時間お湯と触れさせることで、出したくない部分まで出てきてしまう感じ。もったいないからって最後に搾り出したりなんかしちゃったら、美味しくない部分が最後にまとめて出てくるんです。じゅわっ、と。だから鰹出汁を作る時、鰹節は何分で取り出す、とか、昆布だしの時は水から戻す、とか決まっているわけです。コーヒーも同じです。適切な時間だけお湯と触れさせないと、独特のえぐみや渋みが出てきてしまいます。そしてこの過抽出によって生じるえぐみや渋みは、お豆によって大きく異なります。深煎りのお豆が過抽出になるとえぐくて渋い味わいになりますし、浅煎りのお豆が過抽出になると嫌な酸やトゲのようなものが出てきてしまいます。
今回のテーマは浅煎りなので、一応の結論を出しておきましょう。浅煎りのコーヒーは抽出に失敗すると(過抽出になると)、嫌な酸やトゲが出てくるということです。これが、美味しくないパターンの1つ目です。
長くなりましたが2つ目、焙煎がうまくいっていないパターンです。
焙煎度の浅さだけに着目してしまい、キチンとお豆の内部まで火が通っていない場合に起こるパターンです。ぶっちゃけ、消費者からするとどうしようもないわけですね。ある程度はドリップの技術で誤魔化すことができるのですが、根本から直すのはかなり難しいです。
きちんとお豆の内部まで火が通っていないというのはどういうことかというと、まぁざっくり言えば生焼けということです。お豆の表面だけ焼けていて(焼けたような色がついていて)、コーヒー豆の中心までしっかり火が通っていないと、生臭く、これまた独特の酸が出てきます。感覚的には、厚切りのステーキと似ています。私みたいな素人がレアステーキを焼くと、表面はいい感じで断面もぱっと見はピンク色でいい感じなのですが、食べてみるとただの生肉、みたいなことになります。これでは美味しくないのですが、見た目はいいしレアっぽいから、これが美味しいレアステーキな気がしてきてしまう。なんなら、生に近ければ近いほど、高級なレアステーキにすら見えちゃいますね(素人の私からはそう見えてしまいます)。本当においしいレアステーキは低温でじっくり火が通っていながら、適度にレア感を楽しめるものなのですが、本当に美味しいものと、美味しそうに見えるだけのもの、は似て非なるものなんです。
長々と書きましたが、何が言いたいかって、生焼けじゃ美味しくないよってことですね。
長くなっちゃうので、そろそろ結論。
ちゃんと美味しい浅煎りコーヒーって、焙煎も抽出も難しいよねって話です。
焙煎するにしても、温度管理やら時間管理やらで、深煎りより気を遣う。抽出も(これはやってみるとわかるのですが)かなり難易度が高い。難易度が高い割に、最近は浅煎りのコーヒー屋さんが増えている。これは全体のレベルが上がっているのか、ただの流行として終わっていってしまうのか。個人的には美味しい浅煎りはまさに紅茶のような感覚で楽しめますし、コーヒーが苦手な方にもお楽しみいただけるので、はやってほしいなという気持ちもあります。が、前述したような美味しくない浅煎りを飲んで、酸っぱくて美味しくない、と感じる方が増えるのだけは避けたいわけです。どうにもならず非力な願いではありますが、少なくとも、自分自身の主観における美味しい、は守りたいものです。
庭珈琲初の浅煎り、スタートです。